Jeff Mills「Drummer」

2011年末のBeatportのセールの時に、2009年に出たらしい「Drummer」というアナログに大幅に曲が追加されたデジタル版を購入した。リリース当時の詳しい状況は分からないけど、なんとTR-808のみで作られたという。曲のタイトルは有名なドラマーの名前が付けられているけど、まぁテクノのトラックではタイトルはそれほど重要じゃない。だからジョーク。

ゆっくりと、そしていつの間にかフェードインしてくるタムや、ハイハットやスネアにかけられた丁寧なEQ。一聴して「あ、ジェフ・ミルズだこれ」って分かるリズム。曲が始まる瞬間のノイズ。どれも素晴らしい。

808の音しかでてこないのでメロディはない。本当にリズムだけ。基本的には4つ打ちのミニマル。808はテクノのダンスフロアでメインを飾るリズムマシンとは言いがたい。だからこのアルバムに収録されている曲もフロア映えするかといえば、そうではないだろう。808はどちらかと言えば、909のキックの上に追加されるべき要素だから。

故にリスニング向けとも捉えることができるけど、僕はこのアルバムは「思考の為の音楽」だと思った。125前後のBPMで淡々とリズムを刻む808は、ボーっと本を読みながら聞いていると、いつの間にか全く耳に届かない様な錯覚に陥る。心臓の鼓動のように。なんとなく耳を塞いでモノを考えたくなる時に、気がつけばいつもこれを聞いてる。

一般的にミニマルと定義される音楽にさえ、なんらかのメロディーがある。303のフレーズだって、あれは立派なメロディだ。メロディというのはどんなものであれ、感情を左右する要素がある。だから外界とのノイズを遮断したい時には、それこそ川の音でも流れてる方がいいかもしれないけど、それだって、音から感じる情景に引っ張られる気がする。

その点で今作は「無」とも言える。凄い。ミスターポポの「無」を初めてみた悟空の気持ちだ。

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